俺くらいになっちゃうとさ、こんな噂どってことないんだよね!







四月馬鹿後日








「まーつおか♪姓はどうするんだ?夫婦別姓かー?」


太一が松岡の肩に手を回しながらにやにやと意地悪そうに聞いた。
昨日ネタばらしをしたのに未だ引きずっているらしい。
山口もだ。太一を止めもしないで、こちらも人の悪い笑みを浮かべて松岡たちを観察してい
る。
長瀬はというと、我関せずと雑誌を捲っている城島をじっと見つめていた。





「いーなぁー…」





ぽつりと呟かれた長瀬の声がやけに大きく響いて、松岡たちは勿論城島までも顔を上げて
長瀬を見た。
長瀬の心底羨ましそうな視線の先には、城島の姿。
太一は怪訝な顔をして松岡から離れて長瀬の隣に座った。

「何が良いって?」
「松岡くんが」
「リーダー見てたのに、羨ましいのは松岡なのか?」

訳が解らない、という風に太一は城島を見る。城島も困惑した表情を浮かべていた。
雑誌を閉じて徐に城島が立ち上がった。そして長瀬の前に座る。

「長瀬、どしたん?」
「狡いっすよリーダー」
「だから何がだよ!!」

中々核心を吐かない長瀬に苛々していた太一が怒鳴る。
長瀬は益々表情を暗くして無いはずの頭の上の犬耳を伏せた。
その様子に困ったように城島が太一を窘める。太一は溜め息を吐いて松岡の方に戻ってい
った。

「僕が、狡いん?」
「マボもっす、っていうかマボがっすよ!」
「俺かよ!?」
「何でなん?」

松岡の叫びをスルーして城島は長瀬の顔を覗き込んだ。
だって、と長瀬がぽつりと洩らした。





「俺もリーダーと結婚したかったっす…」

















「「「へ?」」」

「マボ狡い!!俺だってリーダーと結婚したかったのに!!!」



今にも泣き出しそうに顔を歪めて、長瀬は繰り返した。
「自分も城島と結婚したかった」と。
昨日白目を剥いて倒れかけていて癖に、何を言い出すのかこの末っ子は。
太一も城島も頬を引きつらせた。昨日ネタバレしたのに、嘘をついていい日だって。


「長瀬―、僕男の子、なんやけど?」
「だってマボ!」
「昨日はエイプリルフールやって」
「そうだよ、嘘だって!大体俺くらいになっちゃうとね、リーダーが結婚相手なんて有り得ない
わけよ!こんながに股の親父ギャグも冴えないオヤジ!俺はもっと上を目指すね!!」


捲し立てる松岡に、城島は「こんなオヤジ」って言い過ぎやん?と少し寂しそうな眼をして小さ
く呟いた。
その様子を見ていた長瀬が勢いよく顔を上げ、城島の手を掴んだ。
驚いている城島を他所に、先程までの落ち込み様は何処に行ったのやら上機嫌で眼を輝か
せている。

嫌な予感が、した。
太一も山口も城島も、出来ればこの予感が的中しなければ良いと祈ったのだが、それは即
行裏切られる。


「マボ、離婚っすね!リーダー、俺と結婚しましょう!!」

何でそうなるんだよ!!!


堪えきれずに太一が叫んだ。そうだ、と山口も賛成する。


「だったら俺もシゲと結婚したいー」
「山口くん!面白半分に混ぜっ返さないで!!」
「半分は本気だ」


えへんと胸を張ってみせる山口に、太一は脱力して何も言い返せなかった。
松岡も口を開いたり閉めたりしているが、言葉は無い。
城島も、誰に何を言えばいいのか解らなくなってきていた。
と、そこへ控えめなノックの音が響いた。そのタイミングの良さに、太一には救いの女神の
ノック音に聞こえたのだが。
入ってきたのは救いの女神どころか、悪魔の集団、しかも男だった。


「なになにマッツーリーダーと結婚したんだってー!?」
「本気か、茂くん!!」


井ノ原が口火を切り、続いて坂本が城島に詰め寄った。
口調こそ真剣だが、顔は玩具を見つけた悪ガキの顔だ。

突然のV6の訪問に、TOKIOメンバーは(長瀬以外)大きく肩を落としたのだった。




「坂本…誰からきいたん?」
「長瀬から。―昨日の夜ね、長瀬と飲んでたんだよ。そしたら長瀬が急にいいなぁ、って洩ら
して。何がって聞いたら、面白いことに茂くんと松岡が結婚したとか言い出すじゃないか!!」
「ちょっと!長瀬と飲んでたの俺なんやけど!」

岡田が坂本に講義をあげる。しかし細かいことはこの際どうでも良かった。
井ノ原は松岡を弄り、坂本と長野が城島に詰め寄り、岡田が控えめに止めていた。
三宅と森田は太一と山口に事の説明を受けている。城島はそっと溜め息をついた。
お茶目なジョークだったはずなのに、何故こんな(他のグループまで飛び火して混ぜっ返され
るという)大事に発展してしまったのだろうか。
間違いなく原因は自分ではない、と思う。
悪意のない笑顔に込められた純粋な期待をその瞳に見ながら、城島は何とも情けない顔で
長瀬を見た。
原因は、彼。育て方を間違ったのだろうか。放任的な過保護が仇となった。(どんなだ)



「マボ、リーダーと離婚するんだ。万事解決!俺、リーダーと結婚するよ!!」


にこやかに言い切った長瀬に、もうこれ以上口を開かないでくれと願った城島だった。
しかし、見付けた玩具をそう易々手放すV6ではなかった。

そして意外なところから更なる火種が煙を上げることになる。











「いいなぁ…」










呟いたのは、岡田。
固まったのは、部屋にいた(長瀬以外の)全員。

何が、とはもう怖くて城島は聞けなかった。
三宅が、岡田を凝視しながらみんなの心の内を代弁した。









何が









それは勇気ある行動だったのか、有り難迷惑だったのか。
城島はこれ以上巻き込まれたくなかった。
言うな、口を開くな。開いても良いが自分の名前だけはだすな、と必死に念じる。
しかしまたもやその念は届かなかった。


「俺も、リーダーと一度でいいから結婚してみたい…」


「「はあぁあぁあぁぁあ!!??」」



固まる森田、叫ぶ三宅と井ノ原、引きつる坂本、黒い笑みを浮かべた長野。
うっかり意識を手放しそうになった城島、同じく固まった太一と山口、凝視する松岡、そして
長瀬はだめっすよーなんてほざいてる。



「リーダーって、そっちの、だよな?」



太一が坂本を指さして言う。山口は太一に人を指さしてはいけませんなどと注意する余裕は
なかった。
岡田はゆるりと首を振る。そして「何でまあくんなんです。城島さんですよ」と言った。


「いーなー優しそうじゃないですか、っていうか優しいじゃないですか。俺と同じ関西弁やし」
「―…で、結婚…??」
「いやぁ…ちょっとでもお近づきになれればなぁなんて…」


照れたように言う岡田に、一同は安心して詰めていた息を吐いた。
長瀬みたいな不思議ちゃんだと言葉が足りなくて困るのだが、ちゃんとした返答が得られて
一気に肩の力が抜けたのだった。


「なら、結婚せんでも…ってできひんし!!」


自分で自分に突っ込んでから、城島は岡田に笑いかけた。


「僕で良かったら何時でも付き合うわ。今度食事でもいこか」
「え…、あ、はい!!」
「これ、僕の番号やねん、暇だったらかけてな」
「有り難う御座います!!」


意外な切っ掛けで距離が一気に縮まって、岡田は上機嫌だった。
長瀬も上機嫌だ。
その笑顔を見て本題を思い出して、城島は泣きたくなった。
せめて来年まで待ってくれれば、来年の4月1日にはしっかり付き合ってやるのだが。
意図が解らない。全く解らない。


「じゃ、これでリーダーは俺のっすよね?」
「いや、長瀬…僕は誰のモノでもないねん。僕は、僕のモノや」
「っつーか離婚とか訳わかんねぇし!!」


松岡が口をアヒルにして言う。
本人は否定しているが、リーダー大好きっ子だ。譬えお遊びでも、美味しいポジションを
みすみす手放すわけがない。




「遊びでしょ、離婚して結婚させてやりなよ」




長野が松岡の性格を知ってか知らずか微笑みながらそう言った。
間違いなく前者だろう。知っていて煽っているのだ。完璧に遊んでいる。


「…ヤダ」
「え――何でっすかー!?マボリーダーのこと散々貶してたのに!!今更未練すか、惜しくなった
んすかー!!!?」
「…ふ、甘いな長瀬。ヴァイオレンスな愛情なんだよ」
「ちょ、長野くんストーップ!何いい加減なこと教えてんだよ!ただでさえ少ない知識に余計な
こと教えないでくれ、今までのが抜ける!!」
「何か今のシツレイっすよ太一くんー!!」
「うっせぇ黙ぁってろ!!大体元はと言えば全部!お前が悪いんだ!!」
「え?ちょ、たんま!太一くん落ち着いて話し合おう!?太一く…っぎゃーーーー!!!!!!」


収拾のつかなくなった楽屋を元に戻したのは、太一のプロレス技だった。
問答無用で長瀬に関節技をかける。局内に長瀬の悲鳴が響き渡った。


「かけられたい奴ぁかかってこいや…」


どす黒いオーラを纏って太一がゆらりと身を起こした。
屍と化した長瀬以外の全員が一斉に首を横に振る。

「いいか長瀬!これはお遊びだ!お前に本気であっちの気があるなら俺はお前とは二度と遊ば
ないからな!!!それに松岡、お前も!遊びなんだから譲ってやれ!―そしてV6のヤローども!!」

太一が普段の松岡のように息継ぎナシで噛むこともせず一気に喋り抜けた。
アイドル☆スマイルを浮かべ指を鳴らしている。


「手前の事件じゃないからって、面白半分で混ぜっ返しにくんじゃねぇー!!!」




長引いたお茶目なジョークは、太一がキレて終わりを迎えた。


この「四月馬鹿☆ドッキリ大作戦」は後味が悪かった。
もう二度とやるもんか、と思いつつ、きっと来年も何かやるだろうなぁ、なんて城島が思って
いることは本人以外誰も知らない。





END




4444Hitキリバンリクエストで「四月馬鹿続編」でした。
如何でしたでしょうか。最初に考えていたのと大分違うモノになっちゃったんですが、
勝利兄さんたちは端から出すつもりだったので出せて良かったですw
でも全然知らないので(爆)喋り方などは気にしないで下さい;
お待たせしちゃってすいませんでした。しかもオチがつまらないで。
夏秋 香さん、リクエスト有り難う御座いましたw