+ 戦場の +





怠い体、重たい瞼をゆっくりと開けたら、飛び込んできた緋色。

血の気が引き、一瞬で覚醒し飛び起きた。


「旦那…」
「どうしたでござるか佐助」
「、いや…何でもないっしょ」


ドクドクと血流が煩く脈打つ。緋色の正体は真田幸村だった。
冷や汗が出た。頭が痛い。

「(血かと、思った)」

乱れた呼吸を整え、動揺を悟られないよう笑う。真田の旦那は首を傾げた。

「あぁ、そうだ。独眼竜の旦那が手土産持って来るって言ってたっけ」
「何!?それは真か!?」

詰め寄ってきた旦那に苦笑しながらも頷いてみせる。
旦那は目を輝かせて「友よー!!」などと叫びながら部屋から走り去っていった。
上手くはぐらかせたとほっと息を吐く。そして体の震えに気付き、忌々しそうに腕に爪を立て
た。


「(情けねぇー…)」


意図せず乾いた笑いが漏れた。

強く在らねばならぬのに、自分はこんなにも弱い。だから、隠す。
悟られてはならない。人前だけでも、俺は強く在らねばならない。

深く息を吐いて立ち上がる。両頬を軽く叩いてから、俺は真田の旦那の後を追った。








「あら?真田の旦那は?」



庭に出ると独眼竜の旦那だけで、真田の旦那の姿は見えなかった。

「Hey、久しぶりだな。あいつなら呼び出しくらって走っていったぜ」
「ふぅん…」

興味なさそうに呟いてみても、内心はひやひやしてた。
戦かな。だったら嫌だな。きっと今の俺は鬼以上になる。
逃げる者まで容赦なく殺してしまいそうだ。

「(羨ましい)」

独眼竜の彼の瞳は揺るがない。強い光を湛え、前と勝利だけを見据えて。
彼に強さを求める俺は身勝手。周りの奴らが俺に求めることを彼に押しつけて。

「(対等になんて、なれない)」

俺は自分が可愛いから、壊れたくなんてないからさ。

俺は独眼竜の旦那の瞳を真正面から見れなくて、口元を見た。
一文字に引き結ばれたその口は、俺と同じ?

「(上に立つ人間は強く見えるだけ。弱さは隠し強さのみを表に出すから、当たり前だ)」

下の奴らは弱さなんか見たくないから、強さのみに目を向ける。
俺みたいに弱い奴は特に、強いと思った人間の弱さに気付かない。


だから。


両頬を手で包まれて驚いて視線を上げて、彼の瞳が揺れたのを見てしまった時、
何だかとても遣る瀬ない気持ちになった。

「Oh、そんな顔をするのは、今だけにしておけよ」

「(どんな顔だよ)」

俺は眉を寄せる。

「(あんたみたいな顔?)」

「それ、こっちの台詞じゃん?」

そういうと今度は彼の眉間に皺が寄った。

俺たちはきっと互いに自分がどんな顔をしているのか解っていない。
でも、解る、きっと相手と同じ顔をしているに違いない。

「(強き者よ。あんたは弱いけど、だからこそ強い)」

あんたの周りで散る紅い華の、その様は。
そう、涙が滲むほど綺麗なんだよ。

「本当の自分を見失わなければ、それでいいじゃねーか」
「そんな、もの?」
「そんなもんだろ」

肩の力を抜けよ、と彼は笑った。うん、と俺は肯く。そして叫んだ。

「What a relief!!」

俺は何をぐだぐだ悩んでいたんだろう!

近くで急に叫んだ俺の頭を、旦那は自身の耳を押さえながら軽く叩いた。


その顔が面白くて、俺は笑いが止まらなかった。

笑いすぎて涙が滲んだ。


俺はこの時、もう既に本当の自分を見付けることが難しいだろうと言うことを悟っていた。
俺は自分を誤魔化しすぎたんだ。真田の旦那や独眼竜の旦那、そして自分自身にさえも。





笑いはいつの間にか嗚咽に変わってしまったけれど、




俺の心は空っぽどころか、満たされていたんだよ。











END




コメンツ
真田と佐助の話の筈が、真田出番少なっ。
えーっと、全体的に(喋り方とか)嘘くさくてごめんなさいね。
やっぱり、無理。もうムリ。むり…あ、返品可ですので。では。


背景:創天