初めから選択権なんて、俺にはなかったんだ。
「Hey、佐助」
馴れ馴れしく声をかければ返ってくるのは返事など可愛らしいものではなく殺気。
「落ちて来いよ」
「降りてきて、だろ」
「いいや、俺のであってるぜ」
口の端を上げれば、ゆるりとした動きで木の上でお昼寝中の忍びは俺の姿をその瞳に捉え
た。
「俺はあんたのところになんか落ちていく予定はないね」
「予定は未定だろ?」
そう言うと忍びは眉間に皺を寄せた。
なぁ、俺が解ったんだ。お前自身だって解っているのだろう?
「(お前は、堕ちるよ)」
俺と同じところか、更に下へ。
初めから選ぶ気なんて、なかったけれど。
「(一人ではないから、堕ちることを恐れるな)」
俺が先に堕ちてよかった。お前に少しでもあの気持ちを味合わせないですむから。
「来い、佐助。俺が引き上げてやろう」
そう言うと忍びは俺を一瞥してから鼻で笑って立ち上がった。
そして何の構えもなくまるで階段を一段下りるようなモーションで、屋根よりもずっと高い木
の枝から飛び降りる。
次の瞬間には俺の鼻先に忍びの顔が不機嫌そうに現れた。
「俺は堕ちないし、もし堕ちたとしてもあんたを踏み台にして上ってやるさ」
その答えに俺は頬が緩むのを止められなかった。
「そうか」
「そうさ。あんたはまさかその暗闇の中の状況を甘んじて受け入れていたの?」
訝しげに俺の顔を覗いて佐助は口を尖らせた。
「(言い返す言葉もねぇよ)」
俺は意地と根性を忘れちまっていたのかね。
少し拗ねたように言った佐助の言葉は、俺の水面に波紋を広げた。
水鏡に映った俺と闇が、揺れて原型が判らなくなった。
「あんたに幽閑は似合わない」
「(あぁ、その通りだ!)」
月に照らし出された夜桜は美しいが、風と舞い遊ぶ夜桜の花弁の更に美しいこと!
風は、動きだ。俺は闇を砕く、蒼き弾丸となろう。
「Humph、お前を待っててやったんだよ」
「口の減らない旦那だね」
やれやれ、と、やっと微笑を浮かべた忍びの顔に、
俺は不覚にも目頭が熱くなってしまった。
END
コメンツ
何が言いたいのこの子!?
と憐れんだ瞳でこっちを見ないで下さい(切実
好きみたい、佐助と伊達男の話/笑
背景:創天

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