二人きりのビルの屋上。

太陽の光は優しく二人を照らしている。
和やかな空気の中急に泣き出した健を、坂本は少し驚いたように見た。


「どうしたんだよ」

困ったように健の頭を撫でて坂本は微笑した。

「わかんない」

健はボロボロと涙を流しながら呟いた。
目を擦ろうとして止められる。
肩を抱き寄せられて、健は素直に甘えることにした。

「急に涙が出てきたんだ」
「何か悲しいことがあったのか?」
「…わかんない」
「そうか」

坂本は特に深追いはしなかった。

「アレルギーかなぁ?」
「アレルギーなのか?」
「―…違う、かな?」

疑問に疑問で返して疑問で答える。不毛な受け答えだと思った。

「悲しいと思って涙が出たの?涙が出たから悲しくなったの?」

坂本は優しく訊ねた。健は暫く考えてから、やはり「わからない」といって弱々しく首を振った。

「じゃあ坂本くんは腹が立ったから怒鳴ったの?怒鳴ったから腹が立ったの?」

逆に訊ねられて、坂本は考えるように空を見上げた。

「どうなんだろうな」

答えにならない答えを口にして、坂本は空を見上げたまま後ろに大の字に倒れた。
きょとんとして健が坂本を振り返る。坂本の視線は空から離れない。

「この空を見上げているとどーでもよくなってくるんだよな」
「―そうだね」

いつの間にか止まった涙。健もまた空を見上げて後ろに寝ころんだ。
坂本の腕を枕にして笑う。坂本は何だよ、という顔をしたがそれを諫めたりしなかった。
それにまた涙が滲む。

何かに不安になっていたのかも知れないし、ただ甘えたかっただけかも知れない。
悲しかったし淋しかったし、嬉しかった。




風が二人を優しく包む。


健は坂本に向かってそっとありがとうと呟いた。
坂本は気付かないふりをして、静かに目を閉じた。















[微風の行く先]








END



坂+健のお話。
何が言いたかったというと、何も(をい
ただ授業で涙を流すから云々という話が出たので。














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