+ #-2  evasion.  +
(ナンバー マイナス トゥ. トウボウ)






行き先なんて解らないんだ。
今現在進むべき方向だって見えない。
完璧な暗闇でも霧がかかってるわけでもない。
白すぎて、先が見えないだけかも知れない。
本当は灯りなんか必要なくて、自分で眼を閉じているのかも。
もしくは目隠しをして歩いているのかも。
見えない壁に苛まれることは自分で自分を責めているからだ。
一歩踏み出してみたら状況は一変するかも知れない。
杞憂は進むことを怠惰しているときにおきる。




「ターカ、何難しい顔してんの」


顔を上げれば大下が自分を覗き込んでいるのが見えた。
それに口の端を上げて応え、煙草を口に銜える。
すぐに差し出されたジッポの炎に煙草を近付け息を吸えば、
視界の端で相棒が笑ったような気がした。


「そんな顔してると女が逃げるぜ?」
「たまには一人になりたいときだって在るの」
「ふうん。珍しい」


自分も煙草を銜え火を付ける大下をミラー越しに見ながら
鷹山はふう、と溜息混じりに煙を吐き出した。


「人間は常に迷っている。
迷っている間は常に何かを求めている」
「・・・え、?何?」
「ゲーテのファウスト」
「あら博識ですこと」


面白くなさそうに肩を竦めた大下に笑って、鷹山はそっと眼を閉じた。

人間は常に迷っているんだ。
進める道が多すぎて、可能性が在りすぎて。
同時に絞られてしまって、その道が困難で。







「逃げてぇ…」



ぽつりと漏らした弱音を、大下は流そうか迷った。
しかし敢えて返事をする。


「たまには、いいでしょ。急がば回れ、ってね」


行き先なんて解らないんだ。
今現在進むべき方向だって見えない。
それでも、歩けると思った。
進まなくても時は過ぎる。ならば、歩きたい。




「サンキュ」
「どういたしまして」


隣に君が居るならば。
きっと俺はまだ蹲ったりはしない。












End...




日記に載せた小咄。
何か雰囲気が甘くなった!?
危刑事のイメージから掛け離れた!!?