銀色の虹が空に架かっている。

男はそれを見上げ、ゆっくりと手に持っていたナイフを下ろした。
辺りに倒れて居るのは同じような格好をした黒尽くめの男たちだ。
男は面白くなさそうに彼らを一瞥するときびすを返した。

青紫の空が、もう直ぐ本来の姿を取り戻す。
男はこの星の名前を知っていた。
銀色に輝く虹は嘗て月と呼ばれた衛生の砕片かけらだということも。



ここは神さえも見捨てた星、その名も煉獄。



人々は嘗て蒼く美しかったこの惑星ほしを、煉獄ゲヘナと呼んだ。










- 神々の黄昏ラグナロク -

+ 序章 +













「おい、イノハラ。ありゃどういうわけだ?」


カラン、と手元のグラスの氷が音をたてて揺れた。
男は鋭い瞳でバーのマスター、イノハラを睨み付けている。
イノハラは乾いた笑みを浮かべ、空のグラスにジンを注いだ。


「何で俺が教団の処刑者ブラザーに狙われなくちゃならねぇんだよ!?」


その声は存外に店内に響き、罰が悪そうに男は顔をしかめる。
イノハラはそれに小さく笑い、男の前に紙を差し出す。
小さな紙切れに眉を寄せた男は、
字の羅列に眼を走らせると口の端を上げ獰猛に笑った。


「成る程、標的ターゲットは俺じゃないわけ。
よりによってあの人を狙うとはね…無謀な奴ら」
「サカモトくん、ジョウシマくんは元気?」
「おぅ、マツオカがシゲルくんの弟子になってから
アーケイロン地方に行ったっきりさ」

男-サカモトは思い出したように喉を鳴らした。
ジョウシマシゲルは、サカモトともう一人、
ヤマグチという男と一緒に暮らしていた男で、元傭兵だ。
今は情報屋であり鋼玉細工師ストーン・ローゼズである。
マツオカという男はイノハラの悪友で、
ジョウシマの噂を聞きつけわざわざ弟子入りにきた男だった。


「じゃあ、サカモトくんはアーケイロン地方に行っちゃうんだ…」


イノハラが寂しそうに洩らす。
サカモトは呆れたような顔をする。そして笑った。


「いかねーよ」
「へ?」
「だってヤマグチが行くもん」


その自信が何処からくるものなのかイノハラには解らなかった。


「ヤマグチくんは知ってんの?」
「ううん、知らないだろ」
「じゃあどうやって伝えるんだよ!?居る場所だって解らないのに!!」
「解るよ?」


サカモトは首を傾げてみせる。




「だって今一緒に住んでるもん」




その言葉にイノハラは肩を落とさずには居られなかった。












End...





ルビが多い…(笑
いや、でも難しいかも知れない…。
サクセサーと話だからなぁもとが…;;