あれから三日がたった。
太一は再び屋敷の前に立っていた。
太一の意志は変わることはなく、あの時と同じ場所で屋敷を見上げていた。
するとまた音もなく何処からか女が一人太一を迎えた。
「お待ちしておりました」
「こんにちは、アルツさん」
「主人がお待ちでございます、どうぞ」
出迎えてくれたアルツについて三日前と同じ道を通る。
違うとすれば、日の光が窓から差し込んで明るいということだった。
「いらっしゃい、太一君」
「こんにちは、城島さん。―…別に呼び捨てでも構わないよ」
「そうか?じゃあお言葉に甘えて。僕もさんは要らない。―太一」
「何?」
「答え合わせ、しよか?」
「―…うん」
太一が促されるままに椅子に座り肯いたと同時に乱暴に扉が開けられた。
太一が入ってきたのとは違う、奥の扉が。
「シゲ!!こいつは何だ!!」
足音荒く入ってきた男は低い声で威嚇するように太一を睨んだ。
太一とそう変わらない背丈。しかし太一と違ってがっしりした体格をしていた。
「お客様やん、達也。失礼やないか、謝りー」
「客だと!?あれ程俺が帰ってくるまで誰も此処に入れるなといったのにあんたは!!」
「ち、違うねん僕がいれたんやないで。アルツや」
怒鳴った相手に城島は慌てて弁解した。
確かにアルツに連れられてきたが、アルツは言わなかっただろうか。
「主人が待っている」と。
擦り付ける気か!?と太一は眉を潜めたが、男は驚いたように目を軽く見開いた。
「アルツが…?」
「おん。やから大丈夫やと思ってん、―な?」
男―達也は城島の座っているソファの前に立て膝で彼を見上げた。
城島がにっこりと笑って首を傾げると、溜め息をついて解ったよと肯いた。
「おい」
達也が太一を振り返って睨み付けた。
太一は思わず睨み返す。
「テメェ茂くんに何かしようとしてみろ?殺すぞ」
「達也」
「今までそうやって死んでいったバカどもは吐いて捨てほどいたからな」
城島の制止を無視して達也は続けた。
嘲笑した達也が嘲笑ったのはそのバカ共か太一か、それとも自分だったのか。
太一には解らなかった。
「達也、大人しく座っとき。それにもう調べはついてんねん。あとは答え合わせだけ」
「はあぁ!?―あんたってやつは…」
腹立たしげに、しかしどこか諦めたような声に太一は達也と呼ばれた男が本気で怒っていな
いことを知った。
その証拠に城島が笑みを広げたのを太一は見逃さなかった。
「じゃ、和解したところで自己紹介やな」
「…はいはい、ったくあんたは。―…あいつも茂くんに甘過ぎなんだよ」
「だってお得意さまやもん僕。ていうか僕専属やし」
掴み所のない笑みを浮かべ城島は視線を天井に移した。
何も映さない瞳で、彼は何を見るのか。
「えー、こっちは達也。そっちは太一」
「え?それで終わり?!」
「…じゃぁ自分で言うたらええやん…」
太一の突っ込みに城島は口を少し尖らせて言った。
そうするよ、といって太一は達也に向き直った。この際城島は無視だ。
「依頼人の国分太一です」
「…山口達也」
名前だけをぶっきらぼうに告げて達也はそのまま黙り込んだ。
城島は溜め息を吐いて達也を突っつく。太一も溜め息を吐きたい気分だった。
しかし自分でも大人げないと思っていたのか、達也は溜め息を吐いてから太一に向き直って
視線をあげた。
真っ向からの鋭い視線に負けそうになりつつも、踏ん張る。
少し間をおいてから達也が少し笑った。
「俺は山口達也。此処の"DOLLENGINEER"だ」
太一はぽかんとして達也の顔を見た。
"DOLLENGINEER"、それは技術者の名前。
"DOLLMASTER"が"DOLL"を動かすなら "DOLLENGINEER"は"DOLL"を創る匠だ。
大変精巧な技術が必要となってくる。
だから、こんなに若いとは思っていなかった。
城島といい山口といい、技術拾得者にしては別格だろう。
此処を紹介してくれた男の言葉を思い出す。
飄々とした、城島とは違った意味で掴み所のない男だった。
『腕は確実、人柄も良い。問題は代償だけ』
代償、なんて懼れない。
「宜しく御願いします」
そう言って頭を下げた。
コレに縋るしかないんだ。
まだ失いたくないんだ。
だから。
太一は此処に来たのだから。
END
うーん。山口さん登場です。
設定は大まか決まっているんですけど表現がねー。出来ないんですよねー。
何か違う方向にそれちゃう…。

|
|
|