何も無かったから。何も持っていなかったから。


自分は酷く軽視しすぎていたのかも知れない。









居場所








この身一つだった。
脈打つ心臓だけあれば、生きていけるとそう思っていた。

青空の下、風に吹かれ雲と一緒に流れ行く。
何もなかったから。でも。何処か空虚。





ある夏の日、日射病で蹲っていた僕を拾ってくれたのは山口。
彼は僕を家に置いてくれた。
だけど。僕にはそれが束縛に思えて、3日後にはこっそり出て行った。


次に、僕は海辺を歩いていた。
はっきり言って運動神経のあまり良くない僕は、テトラポットの上を飛び跳ねてこけ
て、怪我した。そんな僕を拾ってくれたのは松岡だった。
酷くお節介で、僕はそれが煩わしくて一週間で家を出た。
ご飯はとてもおいしかったのだけれど。




宛もなく街を歩いていて、急に天候が崩れた。
土砂降りの雷雨の中、僕は空を見つめて自由を捜していた。


何も持ってない。僕自身だけしか。
なのに僕は自由じゃなかった。


ふと、声が聞こえて辺りを見渡した。
そんな訳ないのに、自分の名前を呼ばれた気がして。


雨の中傘もささずに僕の名前を呼んで。
びしょびしょになりながら僕を捜して。


急に胸が熱くなった。
僕は僕以外に、何かを望んでいたんだ。



マツオカ、と彼を呼ぶと、彼は一瞬泣きそうな顔をして、僕をひっぱたいた。
いきなりの攻撃に僕の体はふらついて倒れそうになった。けど、松岡がしっかりと
支えてくれたので倒れなかった。


彼は僕に帰ってこいと言った。
彼の家なのに、帰ってこいと、そういった。
僕が帰ってもいいと言った。



今なら、解る。束縛なんかじゃないってこと。



僕は松岡の家に住まわせてもらうことにした。
あのお節介が、酷く、心地良く感じる。
もう少しして落ち着いたら、山口を捜しに行こうと思う。




謝罪と、お礼をしに。

あなたの優しさがわかったから。









僕はもう僕だけじゃない。














END


リーダー視点。
ていうか私リーダーが出てこない話書いたこと無いよ!?
何か…こーわー。つか書きやすいんだよねーリーダー。










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