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+広がった波紋+ 「(逆に、問われても困るんだけどさ)」 どうして俺は笑うんだろう。 どうして笑うのがこんなに辛いんだろう。 井ノ原は坂本を見た。 「(気付いてんだろ?)」 決して口には出さないが、彼が気づいているという確信があった。 なのに彼は自分に強いる。 「井ノ原くん」 名前を呼ばれて意識が浮上する。 視界の坂本以外の色を失っていたものが色を持った。 「、どした、剛ちゃん」 反射的に笑みを浮かべた。井ノ原を呼んだ声の主、 剛が自分を胡散臭そうに見ているのを見た。 「ちゃん付けすんな」 律儀に突っ込みを返してくれる剛の瞳は鋭い。 坂本と同じ類の、攻撃性を含む眼だ。 「(総てを、見透かしているような)」 眼を逸らしてしまいたかった。でも獣を彷彿させる剛から眼が離せない。 この、眼差しはーこの獣の眼は、坂本の闇に似て非なるものだ。 坂本のように逸らした瞬間喉笛を噛み切られるような恐怖はなかったが、如何せん気まずい。 「どうしたんだよー見惚れちゃった?」 「バカか?」 ばっさり斬って捨てられるのも結構寂しいんだよな。 そんなことをぼんやりと思っていたら、剛が静かに続けた。 「坂本君に何を期待してんの?」 「―え?」 「あの人が何も言わないあんたに救いの手を差し伸べるとでも思ってるんだとしたら、 本当に救いようがないバカだ」 突き刺さる視線。痛いはずなんかないのに、痛い。 「(期待、なんて……してる)」 彼だったら解ってくれそうな気がして。助けてくれそうな気がして。 同時に突き落とされそうな気がして、怖くて動けない。それが現状。 どうして楽しめない、という疑問は井ノ原の心に深く刺さった。 笑うのが辛いのは楽しめてないからだ。それは解っている、解らないけど。 だけど一つだけ確かなことがある。 苦しくても辛くても悲しくても。それでも俺は笑うんだ。 「(剛は、俺を助けようとしてくれたのかな)」 だとしたら、嬉しい。彼と同じ瞳を持つものが助けようとしてくれたなら、希望が持てるだろ? 井ノ原は剛に笑ってみせた。剛は微かに驚きを表し、バカ、と呟いて井ノ原に背を向けた。 ホント、自分でもバカだと思うけど、仕方ない。 坂本が井ノ原を見た。彼は口の端をあげて"いつもの言葉"を言う。 「なあ、井ノ原、笑って」 ズキリと胸が痛んだけど、痛みを感じるからまだ大丈夫。 「(俺が笑うと あんたも笑うから、さ)」 あんたがいつか俺を救ってくれるって信じてるから、俺は笑うんだよ。 END 井+剛+坂のお話。 何となく書きたかった笑顔の話の続き? えー、ねぇ?剛くんと坂本くんの視線は鋭そうって話ですよ(違 *戻* |