一方天界では、最終決戦に向けて着々と戦闘準備が整っていた。
悪魔族の根絶やしを目的とする殲滅戦。高まる緊張と高揚の中、浮かない顔をしている
天使たちが居た。
岡田の最期をしっている坂本たちと、長瀬の友達である山口たちだった。
「坂本くん、今回の戦いで長瀬も…悪魔になっちゃうのかな」
「知らねぇよ…」
弱々しく聞く健に、苛々としたように坂本は答えた。
そんなことを坂本が知っているはずがないのは健も重々承知だろう。しかし不安で、聞かなく
てはいられないのだ。
「茂くんも…殺さなきゃならないのかな…」
ぽつりと松岡が呟いた言葉に山口も太一も、そして坂本も眉を潜めた。
悪魔は皆殺し。それが今回の命令。ということは城島は間違いなくターゲットで。
「長野くんも、だよね…」
井ノ原もがっくりと肩を落としていった。
城島と長野は、悪魔は悪魔でも変わった悪魔だった。
殺しを厭う、始終笑顔の、それこそ戦いを推奨する天使よりもよっぽど天使に近い、悪魔。
彼らが何を企んでいるかなど微塵も知らず、それがどういう結果を導くかも解らず、天使たち
は悪魔の友達を思って悩んだのだった。
どうすれば助けることができるのか。
どうすればこの戦争を止めることができるのか。
だって、意味のないことだと思うから。
殲滅戦は、何を生み出すのだろうか。
「茂くん、さ」
また松岡が口を開く。みんなが松岡の方を向いた。
「笑ったんだ。俺、逃げて、って言ったんだ。そしたら、心配ないって笑ってた」
「お前…」
「大丈夫だよ、ばれてないから」
敵を逃がすことは死罪に値する。報復攻撃が怖いからだ。だから、殲滅する。
驚いた山口に、松岡は力なくわらってみせた。
「笑ってたんだよ、すっげー優しく。俺、泣きそうになっちゃってさ…。もう、逢えないような
気がして」
思わず抱き締めた。自分よりもずっと細くて小さい体だった。
儚げに笑う彼は、力を入れれば簡単に壊れてしまいそうなそんな危うさ。
確かにあの時は腕の中にあった温もり。
次、逢うときにも、彼が温かいとは限らないのだ。逢えるとも。
「天使って、戦うためにいるんだっけ。悪魔を殺すために生まれたんだっけ」
仲良くしろとはいわない。考えの違いにいざこざだって起きるだろう。
だからって皆殺しに?天使は何をしても許されるって言うのか?
「松岡…」
本人は認めないが、茂大好きっ子だ。そして、優しい。
戦争を、ましてや友達との対立を喜べるはずがなかった。
「仕方ないんだ。これは考えの違い。逃がしてもどうせ彼らは殺される」
だって、羽色が違うのだから。ばれるのなんて時間の問題だろう。
「彼らを逃がして俺等も殺されるか?彼らもどうせ殺されてしまうのに?」
「兄ぃ…!」
「だったら俺等だけでも生きて彼らの分も生きようとは思わないのか」
「彼らがいないのに…?」
解らないよ、と松岡は俯いた。
剛は難しい顔をして何かを考えているし、井ノ原も健もやりきれないような顔をしていた。
太一は長瀬の事を考える。弟のような、彼。無邪気で偽りがない。
どうして混血種は天界で暮らせないのだろう。
どうして、と考えても誰も答えなどくれないのだけれど。
「どっちにしても、沢山の血が流れることには変わりないさ」
「…死なないように、しろよ」
坂本が宙を睨んで低い声で言った。そして、情けをかけるな、という山口からの忠告。
割り切れないかも知れない。それでも、生きなければならないから。
坂本と長野、城島と山口は長い付き合いだった。だからこそ解る想いがある。
やりきれないのは同じ事。でも、無駄には出来ない想いもあることを解って欲しい。
嘆いて嘆いて、それで終わりにしてはいけない。
彼らの想いを掬って、彼らの想いを救って。
悲しくないはずなんてない。
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天界編でした。今回は茂くんと長野くんが悪魔、岡田と長瀬が混血種、それ以外を天使にしてみました。
岡田くん死んじゃってるけどね!ハッピーエンドになる予定は…ありません。

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